
誰かに教えてもらうことはその人の財産を分けてもらうこと
今日は、近年ちょっとモヤモヤしていたことをお話します。
もしかしたら、このことを指摘する私が器が小さいだけかもしれませんが、若いサービスマンの皆様に少しだけ年長者として言っておきたいことです。
12月は飲食業のサービスマンの合否が分かる月
「今年ソムリエを受けようと思います」
「今年レストランサービス技能士(HRS)を受けようと思うんです」
飲食業の大きな資格に、国家資格のレストランサービス技能士(HRS)と、ソムリエ協会のソムリエ資格があります。これらは夏に一次試験がはじまり、最終試験は11月に終わります。
長い試験期間が終わり、ほっとするのもつかの間、12月の合格発表までドキドキするものです。HRSなんてクリスマスシーズンに発表されるものですから、受かればクリスマスプレゼントが届いたなんて言う方もいらっしゃるくらい嬉しいものです。
さて、そんな試験を受けることを私に報告してくれる若者がいるのは大変嬉しいことです。こうやって目標を口に出すと言うのは自分の挑戦意欲を高めるためにも、モチベーションを試すためにも必要なことですよね。
私も若手の頃は

などと、だれかれ構わず言っていました。それで恥ずかしい思いをしてしまったこともありますが(^^ゞ
残念ながら、現在の私はHRSの資格試験においては運営側におりますし、ソムリエ協会に関しては誰が試験官かというのは公開されない&できないのですが、ソムリエ協会の運営に携わっている以上(2019年現在、山口支部の支部長を務めています)、試験のアドバイスなどはしないようにしています。
(当然ですが、試験官に任命された人間は合否に関わるようなアドバイスをしてはいけません)→試験のアドバイスなどはできなかったのですが、ソムリエ試験の受験方式が変わったことに伴い、2020年よりアドバイスOKになりました。ただし、試験に携わっていることを公言できないことには変わりありません。
きっと報告してくださる方の中には、職場で教えてもらえる環境になく(上司がいない、上司が資格を持っていない)、私に教えてもらおうと思った方もいらっしゃると思います。
それは素晴らしい向上心で、私も今でもコンテストを受ける際には遠方の知人に相談することもあります。
立場上アドバイスをしてあげられないのが大変申し訳ないのですが、がんばってくださいねというお声掛けはさせていただきますし、報告してくれた方の結果はいつも気になっています。
寂しがり屋なので合否の報告がほしい(笑)
しかし・・・
この5年、10年の間で直接ご報告をしてくださった方はほとんどいらっしゃいません。
合格発表当日に教えてくださったのはお2人、いえ3人でしょうか(もっといらっしゃるかもしれません、すみません)
もちろん私が報告するのに取るに足らない相手であることが一番の原因ですし、頑張ってねと言っただけの人間にわざわざ報告する必要もないのかもしれません。
でも、きっと私が寂しがり屋なのでしょうね^^;
受けると言っていたけど大丈夫だったかな?合格したかな?報告がないってことは落ちたのかな?こっちから聞きにくいな・・・
なんて気になるんです。
話の流れで知った方とかその方の上司の方が私に受けると紹介してくださった方は別ですが(いえ、気になっていますけど私にご丁寧に報告しなくてもいいと思います)、わざわざ受ける宣言をしてくださった方は頑張ってるなぁ、いいなぁ^^と思ってますので、結果はすごく気になっているんです。
私の時代はメールは失礼でしたが、今はメールで一言でいいと思うんです。「受かりました!」の一文でいいので、もらえたら、めちゃめちゃ喜びます^^
感謝の気持ち
このような偉そうなことを言っている私も、いろいろなところで感謝の気持ちをきちんと伝えられてなく、しまった!と後悔することもよくあります。
ホテルマン時代は、感謝の気持ちが足りなかったり、きちんと謝れなかったりする態度を叱ってくれる師匠や先輩に恵まれました。
しかし今、自分の事務所、店を運営していると普段から私を叱ってくれる人はいません。
なので、時に苦言を呈してくださる諸先輩方には本当に感謝ばかりです。年をとって怒られると、若いころ以上に悩みます。でも、本当に感謝です!
若い皆さんはどうですか?
私が若いころよりも先輩の絶対数も減っていますし、先輩方との飲みニケーションも減っているでしょう。
知識や技術、社内の報告・連絡・相談は教えてもらえても、社外の付き合いにまで関与してくれる先輩もいないでしょうし、社外の付き合いにまで口出ししてほしくない若い皆さんも多いでしょう。
でも、私のような個人事業主からすると、もったいない!
怒ってくれる先輩は皆さんの財産です。私も提携レストランに若いスタッフがいますが、怒る・説教するのにはパワーがいります。
言ってもうるさいと思われるかな、何度言っても分からないだろうな、言わないほうが円満かな・・・私は外部から入っているので余計に思います。
でも、コンサルという立場上、店のどのスタッフも言えないこともホールスタッフにはもちろん、お店全体に関しても言う必要があります。それが仕事です。
言わないほうがラクです。でも、良くなるためには言う必要があります。
そして、私自身も一人で頑張るより、誰かに言ってもらえるほうが成長が早いのです。
なので、私を教育してくださる人をどんどん増やしたいと思っています(みなさん、どんどん叱ってください^^)。
私はそんな方々を増やしたいのですから、同じ会社にそんな先輩がいらっしゃる皆さんは恵まれています。ぜひぜひ大切な財産である先輩方から、いっぱいかわいがってもらってください。
そういえば、思い出しました。
ソムリエ合格の報告(当日かどうかは覚えていない)をしてくれた若手とその上司の2人と話していたときのことです。
その上司が「寺井さん、こいつ試験対策でお世話になった人たちに合格の報告したかと聞くと、『まだです』なんて言うんですよ。」
と言ったんです。私への報告も彼が電話しろといってくれたのかもしれません。
彼は私より5つ以上年下だと記憶していますが、そういう30代もいることに安心したのを覚えています。
もう1つ思い出しました。
私がシニアソムリエに合格した際に、(受けると報告していたわけではないけど受けることは知っている)師匠に電話したのですが、「(誰かに聞いたようで)知っとるわ~。ってか、お前遅いわぁ、当日に連絡するもんじゃろ~(笑)」と言ってくださいました。
再度言いますが、偉そうに書いている私もそんなもんです。一緒に頑張っていきましょう!
不合格の報告は?
さて、不合格の場合。
せっかく教えてもらったのに落ちてしまって報告ができないという方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、落ちた時も堂々と恥ずかしがらずに報告をしてみてはいかがでしょう。
実は私は最初のソムリエ試験に落ちています。
落ちた話にも色々と思い出があり、またいつかここで書いてみたいのですが、それはまた今度。当時の私は受験すると伝えていた先輩や知人に落ちた報告をしました。
師匠、シェフ、先輩、コックさん、お世話になった方、友人、中には当時あまり気の合わなかった先輩ソムリエもいました。
今から思うと、先輩方は落ちた報告を大変大切に温かく聞いてくれました。この時の皆さんのおかげで、今の私がある・・・本当にその後の人生を変えるほど、私にとってはありがたい出来事でした。
そして、翌年合格した際には私以上に喜んでくださった皆様。自分もこうなりたいなと思いました。
また、かなり後になって聞いた話ですが、前述の当時気の合わなかった先輩ソムリエが
「落ちたその日に電話をかけてきて、『教えてもらったのに落ちてすみません』と言うなんてあいつは凄い。自分なら言えない」
という話を周囲にしてくれていたそうです。
気の合わなかったのは、確実に生意気だった私のせいだというのが分かります。こんなことを私のいないところで言ってくださっている先輩に感謝です。
すごい先輩
最後にもう1つ思い出したことがあります。
4年前のウェイターのコンテストで銅賞入賞した際のことです。技能グランプリのホームページには発表日の夕方になっても結果が出ておらず、どうだったのかな??と思っていました。
するとFacebookで、どうやら技能士連合会のサイトでは発表されているという噂が!それを見て銅賞と分かったのと数分とたがわずに、電話がなりました。
広島のウェイターの先輩(私が勤めていたホテルとは別のホテルの方で一緒に働いたことはない)でした。
先輩「おめでとう!」
私「えっ!すごい!技能グランプリのページにまだ発表されていないのによくご存じですね!(この方はFacebookをしていない)」
先輩「うん、朝から気になっとったけど、夕方になっても載らんけぇ、どこに載っとんじゃろ~と思って、色々調べたら技能士連合会のサイトにあったんよ」
いや、もう本当にこの方のサービスは凄いだろうなと思わされた出来事でした。部下になったこともない私のためにそこまでしてくださるなんて。
サービスはハート
私たちサービスマンは、知識や技術もとても大切です。
ワインの知識、料理の知識、デクパージュの技術、私もそういったものを伝えたいと思っています。
ですが接客の本質はこれらの知識や技術ではありません。
知識や技術は接客をより魅力的にするためのツールでしかありません。
大切なのはハートだと思います!
お客様を大切にできるか、先輩や部下を大切にできるか、店を大切に、職場を大切にできるか、自分がいる店を守れるか。店を守るのが他の誰かじゃなくて自分自身なのか。
もしこれを読んでいる皆さんの中に、ここ数年の試験の合否の結果を伝えていない先輩や気にかけてくれる方がいらっしゃるなら、今からでも「報告したつもりになっていたけど、もしかしたら報告してないかもしれません。実は・・・」と報告してみてはどうでしょう。
当然、合否の情報はもう知っているでしょうが、それでもきっと喜んでくれると思いますよ。
まとめ ~サービスはハート!感謝の気持ちで~
私も若いころ、先輩たちに色々と教えてもらいました。
私の時代は教えてもらうというより、背中を見せてもらう時代で、直接教えてもらう機会はあまりありませんでしたが、自分ができないとすぐに指摘してくださったり、怒ってくださったりしました。
正直、怒られて悔しかったことも多々ありますが、それを覚えるのにどれくらい苦労したのだろうと思える接客術やデクパージュ技術など、出し惜しみなく無償でみせてくださる先輩方がいたので、「給料をもらいながら勉強ができるなんて、なんて恵まれているのだろう」と思ったものです。
誰かに教わるということは、その方が人生で得てきた財産を分けてもらうことです!
そんな財産を分けてもらうことに感謝しましょう!
その感謝の気持ちはきっと仲間だけでなく、お客様にも伝わると思います!
私も少しだけ学んできた財産があります。これを若い世代にお伝えしたいと思っています。
ウェイター向上委員会に関しては、コンサル業が本業ですから、自分の商品を無料で伝えていいものかとも考えましたが、先輩方から受け取った財産は後輩に伝えたいと思って立ち上げました。
今日のようなことを書くと、あいつは面倒くさいと思われるだろうなとか、偉そうに言ってと思われるだろうなとか、付き合いにくいし、もう聞かない・相談しないでおこうと思われるかなとか色々悩みました。
でも、私自身は諸先輩方に言ってもらって助かってきたことなので、勇気を出してモヤモヤしていることを書かせていただきました。
こんなところに書かずに直接言えばいいのにという声もあることでしょうが、今回に関しては、ここに書くことを私なりの方法とさせていただきました。
教えることは大歓迎ですし、質問してくれることはとっても嬉しいです。知識や技術だけでなく礼儀というとおこがましいですし、何度も言いますが、私も未熟者で全然できていませんが、一緒に成長していけたらなと思います。
こんな面倒なやつを受け入れてくださったなら嬉しいです。
ぜひぜひ一緒にサービス業を盛り上げ、レベルアップしていきましょう!お気軽にウェイター向上委員会にもお問い合わせください。